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第14回「北畠サロン」文化講座が開催されました 廣橋 一裕氏(高19期)をお迎えし「私らしく生きる ─ 健康長寿への助言 ─」 広報委員会

[ 2017-11-14 ]

平成29年10月14日(土)14時から北畠会館1Fホールにおいて、第14回「北畠サロン」文化講座が開催されました。

講師に、大阪市立大学名誉教授で東住吉森本病院顧問の廣橋 一裕氏(高19期)をお迎えし「私らしく生きる ─ 健康長寿への助言 ─」と題してご講演いただきました。


医者になって44年。いろいろなことを学ばせていただきました。ほゞ10年ごとに節目があり、私はそれぞれの10年の目標を立ててやってきました。

最初の10年は「一人前の外科医になる」。一言で「外科」と言っても、消化器外科、心臓血管外科、呼吸器外科、小児外科…など、様々な外科があり、「全ての分野の外科」を勉強してやろうと思い、1年365日患者のベッドサイドに行って1日も休みが無かったです。医者になった1974年頃の医療は、医者と患者の関係はパターナリズム(医者の言うことは絶対で患者はそれに従わなければならない)が当然という時代でした。

次の10年は「肝臓外科を極める」。私がなぜ肝臓外科を目指したのかというと、肝臓が外科の中で唯一手を付けられない臓器だったので、挑戦してやろうという思いからでした。肝臓がんの研究をすると同時に、20年間で1,250人の肝切除に携わりました。肝臓外科を極めようとした1980年代頃は、肝臓がんを治せなければ医療の敗北だという時代で、患者がもう駄目だとわかっているのに最後の最後まで治療する時代でした(現在は、治療と並行して癒し[ケア]を十分するようになってきています)。手術が成功しても再発する患者がいるので、なんとか助けたいとの思いから、次の10年は「肝臓移植」の道へ進みました。

生体肝移植は、健康な血縁者から肝臓の一部を摘出しなければなりません。倫理的な問題も多く、医療というのは自然科学、病気との闘いだけではなく、人間中心の医療をしていかないといけないと初めて気づきました。そこから、「医学教育や総合診療」の道へ進んだわけです。

 大学の医学部は、「教育」と「研究」と「診療」が中心です。今までは診療と臨床研究に一生懸命だったのですが、教育に軸足が移りました。よい医者を育てるには今まで病気中心に診ていた患者を病人(¬=人)として診る、すなわち生物学的な見地からだけではなく、心理学的な、社会的な側面も考慮しなければなりません。そこで一番必要だと感じたのが「シミュレーション教育」でした。

 シミュレーション教育とは、シミュレーターや模擬患者さんで基本的臨床技能の教育を受けてから、実際の患者に対峙するというものです。私は、シミュレーション教育で先進的なオーストラリアで、シミュレーション教育の現場を体験しました。オーストラリアでは、交通事故の現場を再現し、どのように車からシミュレーターの人形を救出し、治療していくかのプロセスを勉強させます。日本では、それまで患者をモルモット代わりのようにして経験を積ませていました。

文部科学省から研究費をいただけることになり、2007年に大阪市立大学医学部スキルスシミュレーションセンターを開設しました。ここでは、シミュレーターを使い、医学生が医療現場に準じた設定で、心肺蘇生、腰椎麻酔、消化器内視鏡などのシミュレーション教育を受けます。

シミュレーション教育で最も大切なのが「医療面接」です。患者とうまくコミュニケーションを取れなければ、患者は本当のことを言ってくれません。このシミュレーションのためにボランティアで患者役をしてくれる「模擬患者さん」を募集しました。当初やってくれる方が少なく途方に暮れていました。住高19期の同期会で模擬患者さんを募集したところ、数人の方が手をあげてくれました。本当にうれしかったです。私が医学生の頃は医学知識ばかり詰め込まれ、実習は見ているだけでした。シミュレーション教育を受けた今の医学生は診療参加型実習をするようになり、卒業時には患者の前に出しても恥ずかしくないような医者になっています。

現在では、シミュレーション教育の理解と普及を図り、医学生の臨床能力を客観的に評価するシステムが確立されるようになってきました。日本医学教育学会主催で、全国レベルで医学生の臨床能力を評価する「シミュレーションオリンピック、通称シムリンピック」と名付けたイベントが開催され、今年で4回目になりました。

私が医者になりたてのころは病気が相手で、「患者を死なせること=敗北」ととらえていました。そこから、病気を診る→病人を診る→病人の背景も見る→全人的な医療をするというようになりました。私が考える究極の医療人は、患者の一生(生まれてから死ぬまで)と患者の背景(身体的悩み+心理的悩み+社会的悩み)の全体像を見られる人だと思います。そこから、患者本人が「自分らしく生きる」には何をすべきかを考えたいと思います。

仏教の言葉に「生老病死:人には避けられない4つの苦悩がある」があります。「生まれる−自分でコントロールできない」「老いる¬−遅らせることは可能」「病気になる¬−病気になりにくい生活習慣を整える」「死んでいく−死を見つめることは大切」すなわち、自分の健康は自分で守るということです。

厚生労働省が発表している「日本の五大疾病」は、「がん」「脳卒中」「心筋梗塞」「糖尿病」「うつ病を中心とした精神疾患」で、これらによる死亡率を低下させ、如何に健康寿命(日常生活に制限のない期間:男性は71.19年、女性は74.21年[平成25年])を延ばすかが今の日本の課題です。 

●老化について
聖路加国際病院名誉院長であった日野原重明先生が、「老化」と「老い」は違うとおっしゃいました。「老化」は生物学的に機能が衰えていくことで、「老い」は精神面、心理面、社会的背景などをすべて含んだものです。この「老い」の概念も少し取り入れて見ていきます。

「老化」には、「体の老化」と「心の老化」の2つあります。「体の老化」とは”酸素”の供給と消費の低下を意味し、老化とともに良い酸素が細胞に届かないで、悪い酸素(=活性酸素)が増えてきます。体の構成成分のうち、水分、血流、筋肉量、脳重量、肺活量、骨塩量が低下し、脂肪が増加します。その結果、50歳代で動脈硬化、60歳代でがん、70歳代で認知症になりやすくなります。「心の老化」とは、生まれたときに2000億個あった脳の神経細胞が年齢と共に減少し、脳が萎縮し、集中力、持続力、思考力、判断力が低下し、認知症に繋がります。

これらを細胞レベルで見ると、老化とともに細胞分裂の回数とスピードが低下します。これをコントロールしているのが、染色体の末端にあるテロメアです。人間は誕生時に、テロメアを約1万塩基対持っていますが、半分の5千塩基対になったときに細胞が死にます。毎年50塩基対ずつ減少していくので、5千塩基対になるには、5,000÷50=100年かかるという計算になります。人は事故や病気がなければ100歳まで生きられるということになります。現在日本には、100歳以上の人は約7万人いて、若いときにがんや糖尿病に罹っていないというのが条件としてあるようです。健康寿命を延ばすには、テロメアが減っていくスピードをゆるめてやればいいわけです。

細胞分裂の際、その情報をコピーして新しい細胞に伝えていくわけですが、細胞の老化としてそのコピー力が減少します。人間は60兆個の細胞を持っていて、その内の6千万個が毎日入れ替わり、その内の5千個はミスコピーのためにがん細胞になっています。がんにならないためには、ミスコピーを起こさない生活、ミスコピーを起こした細胞をやっつける力=免疫細胞(特にナチュラルキラー細胞[NK細胞])を増やしてやるといいわけです。今年、大阪国際がんセンターが中央区大手前にできましたが、そこでは、落語などを聞いて患者に笑ってもらう試みがされています。笑うとNK細胞が増えます。笑いを取り入れると免疫力がアップし、がん細胞をやっつけることができるということです。

もう一つ、細胞の老化とともに血流の低下が起こります。これは良い酸素が細胞に届かないということで、それは細胞の中で作られるエネルギーを産生できないと同時に、悪い酸素である活性酸素が増加しテロメアがどんどん短くなっていきます。血流の低下もさせないように注意しなければいけません。

●健康について
老化を止めることはできませんが、遅らせることはできます。それが「健康」に対する考え方です。
健康診断での検査値が正常範囲内=健康という考え方は間違いで、「健康」は自分で感じるものなのです。健康を保つために身体はどう働いてくれているのでしょうか ──。
それは三つあり、身体の働きを調節している「自律神経」、ホルモンの分泌を調整している「内分泌」、外敵から身を守る「免疫」です。これら三系統のバランスが取れていることが健康を保つ秘訣です。

自律神経は自分の意志とは関係なく無意識のうちに働いていて、日中活動しているときに働く「交感神経」と寝ているときに働く「副交感神経」の二つがあります。この二つのバランスが崩れると「自律神経失調症」になります。
次に「内分泌」ですが、基本的には”ストレス”がかかると脳の前頭葉からの指令で、下垂体から副腎を刺激するホルモンが分泌され、抗ストレスホルモンである副腎皮質ホルモン(コルチゾール:ステロイドホルモン)が分泌されるシステムになっています。

最後の砦の「免疫」を司っているのは白血球です。顆粒球系の「自然免疫」とリンパ球系の「獲得免疫」に分けられます。外敵が来るとすぐに反応するのが「自然免疫」で、その指令によって「獲得免疫」が反応します。幼少期に感染症に罹ることで獲得免疫が増えていき、免疫力は20歳でピークを迎え、後は低下していきます。そこに生活習慣病などが加わると益々病気になる率は増加します。

この「自律神経」「内分泌」「免疫」の三つがバランスよく保たれていること=健康を保っていることになります。しかし、そのどこかに破綻を来たした場合、バランスが崩れ病気になります。例えば、大きなストレスがかかるとまず自律神経が反応し交感神経が活発になり、ステロイドホルモンがたくさん分泌されます。するとNK細胞が減少しリンパ球の働きも低下します。さらに活性酸素が増加します。そうなると、がんや感染症が発生しやすくなります。そう考えると、がんも生活習慣病に含まれるでしょう。

そこで、リラックスするとよいのでは…と考えがちですが、リラックスし過ぎもよくありません。リラックスすると副交感神経が活発になり、幸せホルモンであるセロトニンやβエンドルフィンなどが分泌され、リンパ球が増加します。一見よいことのように思いますが、体内では粘液の分泌が過剰になり、例えば鼻汁や消化液が多く分泌されます。これはすなわちアレルギーになりやすくなるということです。要するに、どちらに傾いてもダメだということで、ストレスとリラックスのバランスを取ることが大切なのです。

バランスを取るための方法として”ゆったり呼吸”があります。姿勢を正し、鼻から息を吸い(お腹が膨む)、口から息を最後まで吐き切る(お腹がへこむ)ことを繰り返し、自律神経系のバランスを整えるという方法です。また、症状を医者に伝えるときでも肯定的で前向きな発言をする人が健康になりつつある表れで、心と体の一体化が生きがいを生むと言われていて、心の健康に繋がります。

●病気について
「病気(disease)」とは身体的な問題があり医療行為が必要な状態で、「病い(illness)」とは身体的、精神的、社会的のいずれかが健康ではない状態を指します。健康な状態からすぐ発病するのではなく、その前段階として”未病””発病前段階”があり、それぞれの段階で「健康」へ戻してあげることも大切です。

その「健康」を脅かす三大阻害因子があります。認知症やうつ病など、神経・精神疾患である「脳」の疾患。糖尿病や高血圧、高脂血症など(メタボリックシンドローム)の生活習慣病から来ている「内臓」の疾患。サルコペニアや骨粗鬆症など(ロコモティブシンドローム)の骨、関節、神経、筋肉の「運動器」の疾患の三つです。

健康でなくなり介護が必要となった主な原因を見てみると、三大阻害因子が3/4を占めています。最近「フレイル」という考え方が出てきました。フレイルとは、2014年に日本老年医学会が作った言葉で、Frailty(フレイルティ)に対する日本語訳”虚弱・脆弱・老衰”を意味します。健康な状態と要介護状態の中間地点です。高齢者に起こりやすい「フレイル」は、ロコモティブシンドロームやメタボリックシンドロームなどの”身体的要因”とうつ状態や認知症などの”精神的要因”、孤独や閉じこもりなどの”社会的要因”が関係しています。「フレイル」にならないために、「眠る(脳)」「食べる(内臓)」「動く(運動器)」が大切となってきます。

人間は、1日に90分×4サイクル(6時間)を満たしていれば「睡眠」は十分取れています。熟睡度は1サイクル目が一番高く、だんだん低くなります。次にしっかり「食事」を摂る─ 豆・胡麻・ワカメ・野菜・魚・椎茸・芋(”まごわやさしい”と憶えてください)+ご飯を食べましょう。巷では炭水化物ダイエットと称して、ご飯を控えることをよく耳にしますが、炭水化物がなければ解糖系エネルギーは作れません。特に朝ごはんの炭水化物は大事だと考えます。脳では神経細胞を活発にさせ、1日の活動が積極的になります。脳の重さは体重の2%くらいなのに、エネルギーは20%ほど使います。

脳を活性化させるにはかなりのエネルギーが必要なのです。と同時に筋肉にも入ります。食事の後30分ほどで散歩などの運動をすると、筋肉にエネルギーが蓄えられます。そして運動器を鍛えることは、身体の一つ一つの細胞に良い酸素を送り込むことにも繋がっていきます。動くことによって血流量を増加させたいのですが、人間の心臓の一回の拍出量はアスリートでは多いのですが、一般人はある程度の心拍数が確保できないと十分な酸素を供給できません。正常とされる心拍数の範囲は1分間に60〜80回とされていますが、170−年齢=運動可能な心拍数の上限(隣の人と会話ができる程度の心拍数)となっていて、これを目安に身体を動かすことをやっていただきたいと思います。そうするとNK細胞が増加し、記憶の中枢である脳の海馬が活性化され、海馬の体積増加が認められ、認知症になりにくくなります。

●理想の死について
「理想の死」について考えたことはありますか?今の医療では”死”を延ばす(延命)ことは可能ですが、それが果たして幸せなことなのか…。どうすれば私らしく死ねるか。どうすれば私らしく生きられるか。生きざまが死にざまに影響します。

住高19期の友人で今年4月に亡くなった大津永介君のことです。彼は2002年に白血病になり、翌年骨髄移植により社会復帰しました。骨髄移植をすると免疫力が低下します。その結果正常人の2倍もがんになりやすくなります。大津君も2013・15年に食道がん、2016年に十二指腸乳頭部がんに侵され、その都度手術でがんを克服してきました。今年の1月に検査入院を勧められたのですが、住高卒業から50年後の記念誌『50年目のテネシーワルツ』編纂のため入院を拒否しました。記念誌を完成させて3月23日の住高同期会に出席しましたが、4月8日に敗血症のため旅立ちました。死に幸せな死はありませんが、彼の場合は決して不幸な死ではなかったと思います。

もう一つ、「平穏死(身体が弱っていく自然な状態を経て最期を遂げるという死の迎え方)」についてです。死に近づいていくと、歩ける距離が短く二足歩行が難しくなり、食事量が少なくなり、寝ている時間が長くなります。これは赤ちゃんの成長(ハイハイから二足歩行になり、食事量も増加し、起きている時間が長くなる)の逆です。この平穏死を実践した人が、今年の7月に105歳で亡くなられた日野原重明先生です。亡くなられる1年前まで講演をされていました。今年の3月に呼吸不全になり食物が飲み込めなくなると、胃瘻造設や人工呼吸を拒否し、7月に平穏死を迎えられました。

このおふたりの死を通じて、理想の死とは何か…を考えさせられました。みなさんもそれぞれが自分の死について考えていただければと思います。

最後に、「サクセスフル・エイジング(successful ageing/すこやかに老いる)」がTake home messageです。

・老いがゆっくりで病がない→神経系、内分泌系、免疫系のバランスが整っている。

・高い身体機能、認知機能を保つ→眠る、食べる、動くがバランスよくできる

・人生への積極的関与→生きがいを持つ

特に一番大切なのが最後の「生きがいを持つ」ことで、これにより認知能力の低下速度が30%ゆっくりとなり、認知症になる率も60%低くなると言われています。
みなさん、自分らしく生きるために、健康寿命を延ばしていきましょう!
 


4年前に大学を定年退職後、山が好きになられたそうで、時間ができたことで、夏は登山、冬はスキーやスノートレッキングが現在の趣味だそうです。
 講演時の資料の随所に添えられていたお写真は、廣橋氏が山へ行かれた時に撮られた風景や高山植物などで、70歳を前にされてますますお元気でご活躍されている秘訣を伺えたように思います。 


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講演後はケーキとお茶で親睦を深め、散会となりました。
次回は1月27日(土)、ブータン農業の父と言われた植物学者の西岡京治氏の妻でブータンについての展示や紹介の先駆者であられる西岡里子氏(高6期)に「ブータンと50年」と題してお話しいただきます。

広報委員会 杉原元美(高36期)

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